タヌキの動く城

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3月8日は国際女性デー!エトセトラブックスさんに行ってきた

 

3月8日は国際女性デー!

毎年春が始まるこの季節なのでハッピーな気持ちになりますね。街でミモザを持った人をちらほら見かけるのも嬉しい(ミモザは国際女性デーのシンボルフラワー)
まだまだジェンダー平等が実現されているとはいえない今の社会の中で、改めて「やったるで〜!!」という気持ちにさせてくれる日だし、これを機会に興味関心があまりない人も何かを調べたり話を聞いたりするきっかけになるといいな〜と思っています。

そんな特別な日ということで、エトセトラブックスさんにいってきました!

etcbooks.co.jpエトセトラブックスさんは、フェミニズムに関する本の出版社。各回フェミニズムに関するテーマについて素晴らしくまとめられている「エトセトラ」というムック本を出されているほか、下北沢に店舗もありフェミニズムに関するさまざまな本を取り扱っています。

ちなみにエトセトラブックスさんの出版作品の中で、私のオススメはこちら!
フェミニズム」って結局なんなの?ってところがよく分かる入門書として必携の1冊

www.amazon.co.jp

いつもは木金土のみの営業なのですが、前日Twitterを徘徊していたところ国際女性デーということで特別にオープン予定という情報をゲット。この日だけはどうしてもハッピーな気持ちになりたいよ〜〜!!ということで遊びに行くことに。

【結論:行ってよかった〜!】

下北沢で降りて(せっかくなので途中B&Bに寄ったりしつつ)オープン直後くらいに店舗に到着。天気が良くて歩いているだけで楽しい!下北エリアは大学生くらいの子がたくさんいてニギニギしていたけど、新代田のあたりは少し落ち着いた雰囲気なのも良い。

早い時間だったからか、お客さんは私の他におふたりほど。みなさんじっくり本を吟味されていたので「わかります……」と思いながら、スッと中に入る。

お客さんかな?と思っていた方のうちの一人が、なんと一日店長をしてらした伊藤さんで「こんにちは〜!」とお声がけしてくださいました(お会いした瞬間「伊藤さんだ……!」と思ったのですが、こちらが一方的に知っている方にお会いした時どういう感じでいればいいか分からなくて謎の人見知り発動してしまいうまく挨拶できなくてすみません……でも、すごい嬉しかったです……)

本棚の上から下まで面白そうな本が並んでいて見てるだけで楽しいし、イチオシ本が棚差しではなく、ドンと表紙を前にして置かれていたり、入りきらない本が積まれていたりするので、友達んちの本棚見ているみたいな気持ちになる。小説は勿論、文芸評、漫画などなど。体に関することや性暴力に関する本は勿論、「女性と自転車の歴史」の本みたいなニッチなものや個人が発行しているZINEなど、ここでしか出会えない本がたくさんあって、どれを連れて帰るべきかうれしい悲鳴が出る。棚の横に、ポストイットフェミニストの声がたくさん貼られているのも元気が出る。みんな頑張ろうね〜〜〜〜

【今回はこんな本を買ったよ〜!】

エトセトラブックスさんに行くたびに100000000冊くらい買いたくなるんですが、これ以上自宅に本を積むと生きている間に読みきれない&破産する可能性があるので、涙を呑んで今回はこの3冊をチョイス!

「決定版 第二の性 Ⅰ 事実と神話」シモーヌ・ド・ボーヴォワール

今回のお目当て本!フェミニズムに関する決定書ともいわれるボーヴォワールの代表作ですが、実はまだ読んでいなかった一冊。今回の改訂版がなんと十数年ぶりの再販ということで楽しみにしていた&買うなら絶対ここの本屋で買いたい!と思っていたので、無事ゲットできて嬉しい。ちなみに3/7に発売したばかりだったのですが、店内でもいちばん目立つひな壇に積まれていて「信頼〜〜〜!!!!」と思った。

「われらはすでに共にある 反トランス差別ZINE」

昨今のTwitterでの気が滅入るようなやり取りに完全に心を削られていたので、トランス差別に関してもっと知れる本としてこちらのZINEをチョイス。トランス当事者やアライの方などの寄稿をまとめた本で、いろんな人の目線からこの問題について意見を聞けるのが素敵だと思った。最後にブックガイドもついているので、今後はこれを道標に本を読んで勉強していきたいな〜

団地のふたり」藤野千夜

今回のサプライズお迎え本!
実は上二つのテーマに加えて、もう一つ買いたいなと思っていたのが「中高年以上の女性が主人公の本」だったんです。映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」とか「マダムたちのルームシェア」とか、最近おばさん主人公の面白い作品が連発しているので、もっとおばさん活躍話浴びて〜〜なと。

でも自分で探すのだと限界があったので、勇気を出してレジで「おばさん・おばあさんが活躍する本って……」と相談したところ「ありますよ!!!!」と力強い即答。お忙しいのにサッと本棚からピックアップしてくださり、めちゃくちゃ紹介していただきました。レジの奥から別の店員さんもすかさず「あの本は!?」と声をかけてくださる。さすがすぎる。やはりこの本屋、信頼しかない。BIG LOVE……。

今回私が購入した「団地のふたり」は中年女性の二人暮らし系の話だそう。「阿佐ヶ谷姉妹ののほほん二人暮らし」が好きなので、多分好き(雑)と思って買いました。伊藤さんも海外にお住まいだったときにオーディブルで読んだと仰っていたのも決め手の一つに……!これ以外にも海外コミックや韓国小説「破果」などもオススメいただきました。一番最初に名前が上がったのが「破果」だったのですが、残念ながら品切れ……でも覚えました!!

やはり本が好きな人間がオススメ本を紹介してくれるときに発する輝きでしか癒やされない何かはありますね。レコメンドありがとうございました!

楽しかった〜!!また行きま〜す!

ということで、お目当て2冊もしっかりゲット。サプライズな出会いも1冊とホクホクのお買い物となりました。本に金払ってる時が一番生きてる実感があるね!「お仕事は?」と聞かれたので「今日どうしても来たくてサボってきました!(※昼休み)」と言った時にレジ内が若干湧いたの今思い出しても面白い。

一日店長が楽しそうにレジ打ちをしてくださり、最後はめっちゃ手を振ってお見送りしていただき耳まで口が伸びてんのかという笑顔でお店を後にしました。

何気ないおしゃべりだったけど、ここにいる人たちには心を預けられるな、この人たちの口から私を傷つける言葉は絶対に出ないな、という信頼があるだけでこんなに気持ちが楽なんだなあと思った。また来年も3月8日はこの店に来たい。そう思える場所があってよかったな〜

10年経っても神ゲー!「レイトン教授」シリーズ プレイ記2023

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2023年2月9日、みんな大好き「Nintendo Direct」が開催されました。

www.nintendo.co.jp

スプラトゥーン3」のエキスパンションパスの発表やゼルダの伝説 Tears of the Kingdom」の追加情報などなど、任天堂主力商品の激アツ情報が次々と投入され盛り上がる中、我々は目を疑うような発表を目撃することとなりました。それがこちら。

……エ?

エッ エッ

ニンダイ】「レイトン」シリーズ最新作「レイトン教授と蒸気の新世界」を発表! - GAME Watch

エ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!?!?!?!?!


マジで!?!?!?!?!

ということで、なんと2023年の今レイトン教授シリーズ」最新作がNintendo switch版で発表になりました!!ワ〜!!あまりに突然すぎてまだ信じられん。幻かもしれん

レイトン教授の娘であるカトリーちゃんが主人公のスピンオフ的作品は最近も出ていたようですが、レイトン教授自身が主役の新作は「超文明Aの遺産」以降なんと10年ぶり。

かくいう私も中学生時代に友達から「最後の時間旅行」を借りて大ハマりし、その後も第1シリーズ・第2シリーズと夢中でやり込んだ「レイトン教授シリーズ」の大ファン。DSを実家に置いてきてしまったせいで長らく再プレイを諦めていたので、今回の新作発表にはワクワクしまくりです(ルークどうするんだろ……)。そんな興奮冷めやらぬまま、数日Twitterを徘徊していたところ、こんな情報を目撃しました。

え、「レイトン教授」の第1シリーズってスマホ版になってるの??マジ?

 

〜検索〜

なってる

「レイトン教授と不思議な町 EXHD for スマートフォン」をApp Storeで

 

なんとスマホと文明の発達のおかげで、このたび再度「レイトン教授」シリーズをプレイできる環境を手に入れました!!ヤッタ〜!!(ちなみに「逆転裁判」もスマホ版になっているのを発見したのでこれもいずれやります)

ということでかなり久々に「レイトン教授」をプレイして見たわけですが、これがまた面白くて。10代の頃と同じように感動したところ、逆に大人になったからこそ気づけたこと、さらに10年前はあまり考えなかったけど今やってみると「これはどうなの……?」と思ってしまったころなど、色々感想が湧いてきたので、改めてこのシリーズの凄さも含めて書いていきたいなと思います。

 

【とても今更な見出し】

そもそも「レイトン教授」って何作出てるの?

レイトン教授」シリーズは、もともとはゲーム制作会社「レベルファイブ」からNintendo DSのソフトとして発表されました。毎作130問近く用意されているパズルやクイズなど豊富な謎解き要素に加え、ゲーム進行の軸となるストーリーの充実具合も人人気の一つ。キャッチコピーでも「謎解き×映画級!」と謳われていますが、本当に1作やり切ると映画見終わったくらいの充実感がある。キャラデザなどからミステリーだと思われがちですが、どちらかというと近いジャンルはSF。犯人を追い詰めるというよりも、舞台設定そのものに隠された大きな謎を紐解いていくという内容なので、藤子不二雄作品とかちょっとフシギな感じの話が好きな人や、怖いのが苦手な人にもおすすめ。

ちなみに、ゲームの他にも小説やアニメ、映画など色々展開してはいるのですが、「レイトン教授」シリーズと言った場合、基本的には以下の6本を指すと思っていていいと思います。(私も映画は見たけど小説とかは流石に読んでない……)

<第1シリーズ>2007年〜2008年

レイトン教授初登場シリーズ。メインキャラである助手のルーク少年はもちろん、チェルミー警部、ドン・ポールなどが活躍するのはこちら。

<第2シリーズ>2009年〜2013年

大人気だった第1シリーズを受けての、前日譚的な3作(立ち位置はSWのプリクエルと同じ)。レイトン教授とルーク少年の出会いから始まり、レイトン教授の助手として新キャラ・レミが出ているのも特徴。さらに、ヴィランはドン・ポールから新キャラデスコールに。

 

第2シリーズも大人気ではあるのですが、今回スマホアプリ化していたのは第1シリーズだけだったので基本的にはこちらの3本をプレイした感想について書いていきます。

【第1シリーズ ざっくりあらすじ】

レイトン教授シリーズ記念すべき第1作。とある大富豪の遺産相続の鍵となる「黄金のリンゴ」を探して欲しいという内容の手紙を受け取ったレイトン教授は、その大富豪が暮らす街へと向かう。しかし、街の奥にそびえ立つ謎の塔や、その存在を恐る街の人々の不審な動きなど何やら怪しい。ついには、大富豪の屋敷で殺人事件が起きてしまう。

恩師から開けると人が死ぬ「悪魔の箱」を手に入れたという報せを受けたレイトン。急いで恩師の元を尋ねると彼はすでに死んでおり「悪魔の箱」は奪い去られた後。唯一の手がかりであった豪華列車のチケットを頼りに、犯人を追いかけてとある田舎町へ向かうが……

レイトンの元に「10年後のルーク」を名乗る人物から「助けてほしい」という一通の手紙が届く。指定された時計店を尋ねると、急に大きな衝撃が!外に出てみるとなんとそこは悪のレイトンが支配する10年後のロンドンになっていた。さらに、そこには過去に死んだはずの恋人・クレアの姿も。

【大人がやっても絶妙な難易度の良問揃い】

レイトン教授」シリーズ最大の魅力は、なんといっても随所に散りばめられたナゾ解きの面白さ。ストーリー進行の要所要所はもちろん、住民たちとの会話や街中の至る所に隠された謎などを探していく作業自体も楽しい。

全年齢向けゲームだからチョロい問題ばかりかと思いきや、ひっかけ問題はあるは純粋に複雑な計算問題はあるわルービックキューブ的なパズルはあるわで、まじでちゃんと考えないと大人でも全〜然わからない。ちなみに今回10年ぶりにプレイして、まあまあいい歳の大人になったはずが、レイトン先生に申し訳ないくらい解けなかった(不正解が出るたびにレイトン先生が「英国紳士の名折れだ……」というのでマジで申し訳ない気持ちになる)というか現役プレイしてた学生時代の方が全然ノーミスで解けていた気がする。自分の脳の衰えを実感した。脳トレしましょう。

さらに、久々にやってみて改めて良さを感じたのが、解答画面やヒントなど随所で出会うコメントたち。ちゃんと解答に向けたヒントをくれるだけでなく、「もう一度よく考えてみよう」「これはヒントを見る問題じゃないよ」と極力自力で答えに辿り着かせようとしてくれている適度な放任具合が、大人になった今とても心地よかった。最近だと分からないことはなんでもすぐスマホで調べられるし、なんなら世の中もスマホで調べることを前提としたコンテンツばっかりだから、こうやって自分の力でちゃんと考える・考えられるを信じてもらえるって嬉しいな〜

ちなみに、おそらくこれらの文章は、本作のクイズ監修である多湖輝先生が書かれたものだと思うのですが、「頭の体操」などの数々のクイズ本を執筆し「諸悪の根源は個人個人の頭の固さにある」という独自の価値観を大切にしていているからこその距離感なのかも、と思ったりしました。

※ちなみに多湖先生は2016年にお亡くなりになっており、第1シリーズのみの監修です

togetter.com

【謎めいた「街」の構成要素である不思議な住民たち】

個人的に「レイトン教授」シリーズをやるときに楽しみにしているのが、街の住民たちとの交流。どことなく不気味だったり、オドオドしていたり、傲慢だったり、いけすかなさとかわいげの配分が絶妙で非常にいい味を出している。何より、誰一人信用できる感じがしないのがいい。

彼らの言動はとにかく怪しく、全員が部外者であるレイトンたちに何かを隠しているような雰囲気を醸し出す。そうした彼らのおかしな行動は、物語のプロットを進行させる上での「中くらいの謎」として随所に散りばめられ、プレイヤーが解く「小さな謎」と、物語の主軸となる「街全体を包む大きな謎」の架け橋として機能する。つまり彼ら街の人たちは、個々である以上に、大きな謎を孕んだ街の細胞の一つであるような存在なのだ。このあたりに毎回ゾクゾクさせられる。ちょっと因習村っぽいし。

そんな彼らは、いわゆるモブキャラという扱いではあるんですが、全員に専用イラストがあり、ゲーム内のおまけコンテンツでは各キャラの詳細設定もみれるなどなかなかの力の入れたメイキングがされている。モブキャラ同士の関係性など地味に設定があり、本当に知らない街に来てしまったかのような気分にさせられる。ちなみに本編にマジで絡んでこない謎の人間がいたりするのも気味が悪くていい。全員が役に立つために生まれてきてるわけじゃないもんな。懐の広いゲームだ。

個人的に好みなのは、「最後の時間旅行」に出てくる宿屋の孫娘ベッキーちゃん。かわいい。でも、一体いつから彼女があの街に住んでいたのか分からないのが怖い。

↓ちなみに彼らの生みの親は「イナズマイレブン」や「妖怪ウォッチ」なども手がけるイラストレーターの長野拓造さん。作風の使い分けが凄すぎる〜

www.instagram.com

そんな愛すべき胡散臭い住人たちですが、彼らの「いい人かもしれないし、悪い人かもしれない」というキャラメイクは、メインストーリーを作る上での世界観と重なるのではないかと思っている。先ほどもチラッと書いたが「レイトン教授」シリーズは、ミステリーというよりどちらかというとSF的な展開が多い作品。誰か一人巨悪がいる、というわけではなく時間のトリックや舞台そのものの秘密、さらには個々の小さな善意や勘違い、悲劇などが複雑に絡み合って大きな謎が生まれるという展開。いわゆる「悪者」がストーリー上生まれにくい。

特に「悪魔の箱」や「最後の時間旅行」は、最終的にレイトンと対峙することになる敵がいるにはいるが、彼らにも悲しい過去があり、それを知った上だとかなり辛い結末を迎えることになる。確かに彼らがやったことはまあまあな悪事ではあるんですが、正直それ以上に同情してしまう気持ちの方が大きい。

「探偵モノ」と聞くとつい「結局誰が悪かったのか」で結末を求めてしまいがちだが、本作では、巨悪が存在するわけではなく、モブからメインストーリーに至るまで、誰もが加害者にも被害者にもなり得る、というビターな語り口が徹底されていることで、大人から子供まで広くヒットを生んだのではないかと思う。

ちなみに10年前にも同じシナリオでプレイしているはずなので、流石に内容を覚えているかと思いましたが、マジで何にも思い出せず3作とも「エ〜〜!?」と新鮮に驚きながらプレイしました。脳細胞マジで終わってるゥ〜

【何なら本編よりもやってたミニゲーム

ここまでメインとなる「レイトン教授」シリーズの楽しみ方を紹介してきたわけだが、個人的に実は一番ハマったのが、ミニゲーム。現役プレイ時はあまり興味が持てなくてスルーしてしまっていたんですが、今やるとマジで面白い。なんなら本編より一生懸命やってたかもしれん。

特に面白かったのが、2作目「悪魔の箱」でプレイできる「ハーブティ」のミニゲーム。住民からもらえる9個の食材から3つを組み合わせてハーブティ錬成するんですが、これがも〜〜〜〜全然うまくいかない。しかもうまくいかないとレイトン先生とルークからけちょんけちょんに貶されるのでメチャクチャ笑ってしまった。挙句の果てには「泥水」とか言われるし。ハーブティ作ってて泥水ができるわけねえだろ、全部飲めオラッ!

あと2作目ではハムスターをダイエットさせるプログラミング風のゲームがあったんですが、ハムスターのボイスが謎に関西弁で「ワイ走るの嫌いやね〜ん」とか言い始めて世界観どないなってんでしょうかと思った。イギリスにも関西弁みたいな訛りがあるのかしら。不評だったのか3作目では、同じボイスの人が任意タッチのキャラに変更になっており、なんか、それはそれで寂しかった&プロデューサーよっぽど気に入ってたんだな……と思った。

【2023年に聞くと、やや引っかかる「英国紳士」というキーワード】

さて、ここまでレイトン教授を10年ぶりに再プレイしてみて改めて感動したことや色褪せない面白さなどについて書いてきましたが、2023年になったからかちょっと気になるところもありました。

それが、ヒロインとして登場するアロマさんを始めとした女性キャラ周り。さらに、それに関連するレイトン教授の口ぐせ「英国紳士」周りについて。

〜注意:ここから作品のネタバレを含みます〜

 

 

 

 

 

まずアロマさんですが、彼女は第1作「不思議な街」で、父親の作った大きなカラクリの街の謎が暴かれた後、レイトンやルークに連れられてロンドンに移り住みます。彼女のことをとても大切に思っていた父親によって塔に住まわされ、父の死後、そこから助け出した人と共に暮らすように言いつけられていたためです(これもこれでどうなのよ……人権……)

アロマさんは非常に奥ゆかしいいわゆるお嬢様で、自分を助け出してくれたレイトン先生のことが大好き。どんなに危険な冒険も一緒についていこうとします。しかし、レイトン先生もルークも「女性を危険な目に合わせたくないから」と連れて行くことに乗り気ではありません。まあその理屈自体は分からんでもないのですが、アロマをハブにするときのレイトンとルークの挙動がまあ酷い。

特に、3作目では、アロマから「置いていかないで!」と言われ「分かった、連れて行く」と約束した直後、彼女が台所に向かった一瞬のすきにアロマさんを置き去りにして調査に向かってしまいます。ヒデ〜〜〜。もちろんアロマさんは、置き去りにされたことに気づき呆然とします。レイトンとルークのボーイズクラブ的なノリが強調され、女が冒険に加わることを決してよしとしません。これは非常に古いな〜と思いました。

加えて、40も近いであろうドン・ポールが10代そこらのアロマさんに対して「ワシはアロマちゃんと一緒がいい」と下心を見せる、アロマさんが最後悪者に連れ去れたりと古典的なトロフィーの役割を背負わされるなど、なかなか女性描写については厳しい箇所がチラホラ。

アロマさんだけではなく、3作目でその存在が明らかになったレイトンの恋人・クレアについてもかなり重要な立ち位置である割には、軽視されているように感じた。彼女のパーソナリティではなく、彼女が「たくさんの男性から言い寄られる存在」であることだけが物語に寄与しており、結局はメインとなる男たちの「クレアを愛したから」という動機のためだけに使われてた印象。他の男たちが人物として描かれていたのに対し、クレアはあくまで舞台装置としてしか動いていなかった。そして最後には死んでしまうというまさに典型的な「冷蔵庫の女」。

さらに、レイトンの決め台詞である「英国紳士」も気になった。特に「英国紳士ならば女性に優しくしなくてはいけないよ」というセリフですが、これは2023年に聞くとなかなかしんどい。少なくとも残念ながらカッコイイ台詞ではない。自動車学校の筆記みたいなこと言うけど、英国紳士なら男女関係なくみんなに優しくしてください。「女には優しくしろ、男には優しくしなくていい」という文化はややトキシックマスキュリニティを感じざるを得ない。男だって無礼な女には無礼だって言っていいんですよ。

と、いろいろ言いましたがあくまで2007年のゲームだし、これらの女性描写問題は、第2シリーズの方でだいぶ改善していたような記憶がある(あんまり覚えてないけど)。久々にプレイしてみて世の中の変化や、自分自身の感性の変化などを感じるな〜と思った内容でした。

全然話違うけどレイトン教授の「年下の女からやたら言い寄られるけど、過去に才能あふれるサバサバした地味女と築いた深い恋愛関係の中で一生を生きていくと決めてそう」という人物造形はマジで解釈一致。絶対敵わね〜〜んだ、こういうタイプの女に惚れてしまったヤツには……

【10年ぶりの3作クリア、その結果……】

首を痛めました。
あまりに面白くて三日三晩ぶっ続けてプレイしていた結果、肩と首を完全におかしくしてしまい下はおろか横も向けません。当然寝返りも打てないし、朝起きると激痛が走る。10年前と違って「スマホなのでいつでもどこでもできる」「親の監視がない」「体が衰えた」のトリプルコンボをくらい、色んな意味でもう若くないことを痛感している。レイトン教授、めっちゃ面白いからぜひプレイしてもらいたいですが、皆さんも体に気をつけてね!!!!

第95回アカデミー賞 短編ドキュメンタリー部門ノミネート作品感想

いよいよこの時期がやってきました。
映画の祭典、第95回米国アカデミー賞

毎年2月が恒例のオスカーですが、一昨年ぐらいからコロナの影響などで時期がズレにズレ4月とかにやっていたのが、今年はようやく少し戻って日本時間3月13日に開催されることが決定したそうです。相変わらず月曜日早朝(アメリカ時間の日曜夜だから仕方ないんだが)という日本で生活する社会人にはなかなか厳しいスケジュールではありますが、今年もしっかり有給をもぎ取って、家で缶チューハイ片手に米国中のスターオブスターが集まる年に一度のステージを楽しみたいと思います。

そんなアカデミー賞、毎年だいたいスケジュールが決まっています。
中でも重要になってくるのが、GG賞が終わったあたりで行われるノミネーション作品の発表。アメリカ中、ひいては世界中から来た膨大な数の応募作はまず一度「ショートリスト」と呼ばれる一覧にまとめられ、その中から選りすぐりの作品だけが賞レースに参加できるというわけなんです。

今年も去る1月24日に無事にノミネーション発表が行われまして、A24製作「Everything Everywhere all at once」の最多ノミネーション快挙や、2022年の話題作「トップガン マーヴェリック」の作品賞食い込み、まさかのダークホース「逆転のトライアングル」の躍進劇など、映画界隈は大いに盛り上がっていました。

しかも、今年のノミネーションプレゼンターは「サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ」の主演や、去年の短編実写作品賞受賞作「The Long Goodbye(原題)」でプロデューサーも務めたリズ・アーメッド!大好き!最高!次の007は絶対彼にやってほしい。頼んだぜ。

【面白い作品が見たいなら”ドキュメンタリー”を見逃すな!】

ということで、来る3月13日に向けてこれから一生懸命ノミネーション作品を見なくてはいけないわけなんですが、24ある部門の中でも私が毎年地味に楽しみにしている部門があります。それが「短編ドキュメンタリー賞」

アカデミー賞にはドキュメンタリー部門が2つ用意されておりまして、尺が40分以上だと「長編ドキュメンタリー賞」、40分未満だと「短編ドキュメンタリー賞」になります。ちなみに、長編も短編もアカデミー賞の第14回(1940年代)からあるということでかな〜〜〜り歴史の長い賞なんですが、毎年何が獲ったところでほとんど話題にならないことでもお馴染みです。新参(2001年設立)の長編アニメーション部門はあんなにワーキャー言われるのに……

そんな影の薄いドキュメンタリー部門ですが、実は毎年めちゃくちゃ粒揃いで本当に面白い作品が集まっている隠れたミラクル部門なんです。ほんとです!!信じてください!!

その証拠に、長編ドキュメンタリー部門であれば2020年にノミネートされたシリアのアレッポで活動する記者夫婦が生まれたばかりの娘に向けて内戦の様子を記録したドキュメンタリー「娘は戦場で生まれた」は、日本でも劇場公開されたりEテレの「ドキュランドへようこそ」で放送されたりと話題になりましたし、

www.transformer.co.jp

2021年の受賞作であるNetflix「オクトパスの神秘: 海の賢者は語る」は、メスのタコとメンタルブレイクおじさんのラブラブ生活を記録した作品で、タコちゃんの愛くるしい姿で数々の人間を魅了し、二度とタコの刺身を食うことができないようにするきっかけにもなりました(なってない)。

www.netflix.com

ちなみに昨年2022年も、伝説のウッドストックライブを記録した「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)」や、アニメーションで難民のインタビューを描いた異色のドキュメンタリー作品「FLEE」が並ぶ、これまた豪華な布陣だったんですが、長編ドキュ部門のプレゼンターを務めたクリス・ロックが大ヘマをやらかしたせいでウィル・スミスぶちギレ騒動の舞台になり、散々な目に遭いました。あの騒動が「長編ドキュメンタリー部門」の発表の場で繰り広げられていたことを覚えている人間が一体何人いようか……

 

そんな隠れたメチャ面白作品が集まる「長編ドキュメンタリー部門」ですが、それに負けず劣らずスゴイ作品が集まるのが「短編ドキュメンタリー部門」なんです。なんなら尺が短い分「この短尺で、見たことないモノ見せたるわい!!!!」みたいな異様な気合が入った豪速球みたいな作品ばっかりくる。

昨年2022年も、米国のホームレス問題を描いたNetflix「私の帰る場所」や、ろう学校の超強豪アメフトチームを舞台にしたNetflixオーディブル: 鼓動を響かせて」など時代を切り取った新鮮なテーマが多く、個人的には大満足の年だった。

www.netflix.com

www.netflix.com

(↑ちなみにオーディブルは、作品賞を受賞した「CODA あいのうた」と同じ”ろう”がテーマだったが、個人的には「オーディブル」の方が好みでした。彼らの音に頼らないコミュニケーションがスポーツの世界でむしろ強みになっているという事実に痺れたし、体と体がぶつかるくぐもった音の演出とかもかっこよかった。オススメ!)

特に近年は、難民問題や女性問題、貧困などに寄り添う作品が多く、社会を見るという意味でも、素晴らしい作品が数々揃っているように感じる。尺が短いからといって制作の大変さは長尺と相違ないんでしょうが、なんとなく長尺よりも軽やかに最新のトピックを取り上げやすいのかな〜と思ったりしている。

ちなみに結構前ですが、「ピリオド -羽ばたく女性たち-(2018)」アカデミー賞受賞した際に、壇上でのスピーチが非常に感動的で「ついにアカデミー賞の場で生理の話ができるまでになりました!」と製作者が涙ながらに語っていたのが印象的だった。

さらに「短編ドキュメンタリー部門」の魅力は、なんといっても見やすさ!!!だいたい20分〜40分くらいの作品が多いので、あまり気構えずに見始められて1本で完結するのもいいところ。最近では全編YouTubeで公開してくれている太っ腹な作品などもある上に、後々日本のテレビ(主にEテレ)で再編成されて放送されることがあったりと、何かとアクセスがしやすいのもお気に入りポイントの一つ。

アカデミー賞というと、作品賞や監督賞など華々しい部門がフィーチャーされがちだが、ぜひ今年は世界の素晴らしい才能たちが世界をどう切り取ったかがわかるドキュメンタリー部門にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

【今年の「短編ドキュメンタリー」ノミネーションはコレだ!!】

ということで、アカデミー賞の隠れた名部門・短編ドキュメンタリー賞を紹介してきたわけですが、ここで今年第95回の顔ぶれを紹介していきたいと思う。

  • 「エレファント・ウィスパラー:聖なる象との絆」(Netflix
  • 「HAULOUT」(The Newyoker)
  • 「HOW DO YOU MEASURE A YEAR」
  • 「マーサ・ミッチェル ー誰も信じなかった告発ー」(Netflix
  • 「Stranger at the gate」(The Newyoker)

あいかわらずNetflix強ェ〜〜〜〜。もはやドキュメンタリー界隈ではNetflixは最強格になって久しく、今年もしっかりブイブイ言わせている。

そして地味に刺さってきたのがThe Newyoker。確か去年はノミネーションなしだったと思ったんですが、今年は2作も入るサプライズ。しかも、両方めちゃ秀作な上になんと公式が全編配信しているという気前の良さ!素晴らしい!

個人製作と思われる「HOW DO YOU MEASURE A YEAR」だけは、見ることができていないんですが、他の4作が非常にアクセスしやすく、しかもどれも超面白い当たり年。早速、今年のノミネーションがどんな作品か紹介していきたいと思います。

 

「エレファント・ウィスパラー:聖なる象との絆」(Netflix

www.youtube.com

まず最初は、南インドで親を失った野生の仔象の飼育をしている夫婦を追ったこちらの作品。40分と短編にしてはしっかりめの尺ですが、象のかわいさや南インドの美しくワイルドな自然は非常に見応えがある。

中でも注目したいのが、人間と動物がまるで家族のように暮らす光景。野生のゾウの飼育は当然簡単なものではなく、特に仔象の飼育は主人公のボムマンとベリ夫婦が初めて成功させたそう。ボムマン自身も先祖代々聖なる生き物であるゾウの世話をしていることを誇りに思っており、まるで本物の親子のようにゾウを家族として迎えている。
彼らが迎えた仔象ラグは、親を亡くし瀕死の状態だったところを保護されたゾウ。子供の頃から人間に育てられたラグにももう野生には戻る居場所はなく、ほとんどゾウの姿をした人間の子供のよう。体の大きさは全く異なるけれど、鼻と手をつないで歩く様子は子供が親に甘えるようで、これを”家族”と呼ばずになんと呼ぶのだろうと思わされる。

南インドでは、たびたびゾウによって村が襲われる被害が発生しており、ゾウが害獣としての扱われることも多いという。貧しい村々も少なくない地域では、いくら絶滅が危惧されるとはいえ、畑や人に被害が出たら手を出すなとは言えないだろう。

www.nikkei.com

でも、ボムマンとラグ親子のように、互いを愛しみながら生きている姿を見ると、こちらが与えようとすれば動物も応えてくれるのではないか、人間は今まで自然から「貰おう」とし過ぎていたのではないか、と思わずにはいられない。

また、このドキュメンタリーのすごいところは出演者たちの自然体な姿をカメラに収めているところ。監督はインド人のKartiki Gonsalvesさん。この個人HPのまた素敵なこと……

www.kartikigonsalves.com日頃からインドを拠点に自然や社会をテーマにしたドキュメンタリーを製作しているそうなんですが、個人のインスタグラムに載せている「エレファント・ウィスパラー」のオフショットを見ると本当にボムマンやラグたちと仲良しなんだな〜!とわかる写真がたくさんアップされていて思わずニッコリしてしまう。

www.instagram.com

こんなにナチュラルな表情を引き出せるのも、Kartiki Gonsalves監督がちゃんと信頼を勝ち得たからなんだな〜というのが分かるのもこの作品の好きなところ。

 

「HAULOUT」(The Newyoker)

続いてご紹介するのが「HAULOUT」。こちらは25分とやや短め。
なんとYouTubeで全編無料で見れます!!!太っ腹〜〜〜!!!

www.youtube.com

ロシア人の海洋生物学者・Maxim Chakilevさんが、シベリア沖で毎年秋に行っているある調査の記録をしただけの作品なんですが、もうマジでこれとんでもない作品です。

まずスゴイのがナレーションやインタビューが一切ないところ。Chakilevさんが記録のために発するボソボソした喋り声以外は、一切人の声が入らない。寂しい風の音や、ゴウゴウと鳴る波の音など自然の発する音だけが響き渡る。しかも映像はずっと薄曇りの寒々とした北の海。

でも、そんな攻めた演出が許されるどころか、逆にとんでもなく効果的に仕上がってるのがこの作品のさらにスゴイところで、とりあえず最初の6分目まで騙されたと思ってみてもらってもいいですか???本当に今まで絶対に見たことない光景を見られると保証します。信じてください。私は腰が抜けました。

「HAULOUT」という単語自体が「引き摺り出す、引き上げる」という意味なんだそうですが、まさにその通りで海から大量に押し寄せる"彼ら"の決して快適ではなさそうな姿には、もはや何らかの大きな力によって意志に反して引きずり出さされているようにも見えてだんだん怖くなってくる。

目の前に広がる圧倒的な自然のパワーと、それを黙々と観測し続ける生物学者。彼が観測を続けていることによって一体何が分かるのかというのが最後の最後で明らかになるんですが、その理由を知ってから改めてこのドキュメンタリーで描かれる光景を見ると、とても深刻な気持ちになる。

映像としての圧倒的なインパクトだけでなく、この映像を見ることによってより環境問題の深刻さについて考えさせれるという点でも、今回この「HAULOUT」が他のノミニーと比べて頭ひとつ抜けた仕上がりになっているなというのが個人的な感想でした。こういう作品があるからドキュメンタリー見るのやめらんね〜んだよな〜〜!?!?!

 

「マーサ・ミッチェル ー誰も信じなかった告発ー」(Netflix

続いてもNetflix作品ですね。こちらは自然物ではなく、ウォーターゲート事件についてニクソンの側近であったミッチェルの妻・マーサの視点から描いた近代史もの。

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なんで2023年の今、ドキュメンタリー界隈では擦られまくったウォーターゲート事件を??と思ったんですが、蓋開けてみたら昨今の#Metooなどの近からず遠からずというか、いわゆる「権力に口を塞がれた女」についての話だったので驚き半分、とても興味深く見た。

主人公であるマーサ・ミッチェルは、ニクソン政権で司法長官を務めたミッチェル(知らんかった)の元・妻で、当時の政治家妻界隈が3歩下がって夫を立てる人ばっかりだった中で男に混ざってパーティーを楽しんだり、酔ったテンションでマスコミの知り合いに電話かけまくったりするなかなか豪快なタイプの夫人だったそう。最初こそ庶民人気もあったので、発言の危なっかしさを危惧されつつ政権も泳がせていたらしいんですが、だんだんと現政権の後ろ暗いところに気づき始めたマーサが爆弾発言をすることを恐れたニクソン政権は、急にマーサを「狂人」に仕立て上げ、その発言は全て妄想だというふうに世論を操ろうとし始める。

ちなみに当然のちのちウォーターゲート事件は真っ黒だと判明し、それによってマーサの発言は妄想ではなかったと分かるわけなんですが、そういう「個人の妄想だと思われていたことが後々事実だと分かるプロセス」を「マーサ・ミッチェル効果(Martha Mitchel Effect)」というそうです。ちなみに、マーサよりも前に同じような目にあって理不尽に口を塞がれた人(中でも女性は)多かったろうに、ここまでこういった症例に名前がつけられず、反抗する術もなく消えていった人がいたのだろうと思うとゾッとする。

ちなみに若干テーマが違うが、現在公開中の「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」も権力者であるハーヴェイ・ワインスタインが、被害者女性に金を押し付けて口を封じる契約を結ばせて悪事を働き続けていたということが明らかになる話で、そのことを思い出したりもした。性犯罪を受けた人が被害を訴えようとしても証拠になるものが提出できず「妄想だ」と決めつけられ口を封じられることも消して少なくないだろうし、政治や映画以外でも権力者男性が活躍する海面下に「マーサ・ミッチェル」状態の人がどれほどいるんだろうと暗い気持ちになった。

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「Stranger at the gate」(The Newyoker)

ラスト!こちらもThe Newyoker製作の作品で、舞台は現代のアメリカ、インディアナ州。全編30分YouTubeで無料で見られるよ〜!(日本語字幕なしなのでなかなかハードですが、私でも分かったので意外と大丈夫だと思います)

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こちらも近年話題になりやすい人種差別やレイシズム、白人男性による加害をテーマに扱った作品で、メインとなる語り手は軍隊出身でPTSDを抱えた中年白人男性・Richard McKinneyさん。学校に馴染めず、早い段階で薬物の販売などに手を出してしまった彼は、18歳になると海兵隊に入隊する。アフガニスタンで戦争に参加した彼は、帰国後もイスラム教徒への深い憎しみを抱き続ける。ある日彼は、地元のモスクへの襲撃を計画する。実際に武器を手にしモスクを訪れるまでに至るが、そこから自体は予想外の方向へ展開していく。

この筋書きだけ読んで、「白人男性」「イスラム教徒」「モスク」という単語で、大体どんなことが起ころうとしたのかある程度恐ろしいイメージが脳みその中に浮かんだんじゃないでしょうか。おそらく、それがこの作品の制作者たちの狙いであり、それをひっくり返すことがこの作品の最大の目的なんだと思う。

この作品では、主人公であるRichardのほか、彼の妻とその連れ子、そして襲撃があった際にモスクに通っていたイスラム教徒の男女3人がインタビューに出演する。妻と子から語られるRichardは、楽しく頼れる家族の一員としての彼の姿を語る。そして、難民生活などを経てインディアナ州にたどり着いたイスラム教徒たちは、Richardがモスクを訪れたときの様子を語る。どちらも正しく、どちらもRichardの姿。彼の事を全く知らない状態で要素だけを取り上げれば「レイシストの白人男性」だが、様々な角度から分解していくことでRichard McKinneyという一人の男性のが浮かび上がる構成になっているのだ。

「白人男性は相手を加害するだろう」「イスラム教徒はそんな白人男性に殺されるだろう」。誰もが無意識に抱くそうした偏見、そしてそこから勝手に想定される物語を全部ひっくり返すことで、他人をラベリングすることの虚しさやバカバカしさを描いているように思う。そして、その語り口はどこまでも暖かく、人はいつでもやり直せるんだ、改め直せるんだという事を優しく語りかけている。世の中がギスギスしていて、つい人を裁きたくなってしまうがそういう時にこそ見てほしい一作だ。

 

 

以上、今年の第95回アカデミー賞短編ドキュメンタリー部門ノミネーション作品の感想でした!「HOW DO YOU〜」だけ何としてでも見たいんですが、全然見る方法が見つからない!ぜひ日本でも公開してくれることを祈るばかりです。(そしてぜひ字幕をつけてください)

地味だけど粒揃いの短編ドキュメンタリー部門、ぜひ見てみてはいかがでしょうか!

総勢100人のガチ運動会!Netflix「フィジカル100」で推し筋肉を探せ

Netflix制作韓国のコンテスト番組「フィジカル100」、めっちゃ面白くないですか?!?

マッチョが大大だ〜い好き(体が大きい生き物が好き)なので、マイリストに入れて随分長いこと楽しみにしていたんですが、これがまた予想以上に面白く毎週火曜日がすっかり楽しみになっている。

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現在4話まで見ただけの状態なんですが、こんなに面白いものを他の人が見てないなんてことがあっていいだろうか(いや、ない!!!)……ということで、とりあえずこの番組のスゴイところをお伝えしたいと思う。

【個性豊かなマッチョたちが織りなす筋肉の大饗宴】

この番組の最大の見どころは、なんと言っても豪華な出演者たち!
韓国中の筋肉自慢を100人集めて、さまざまなゲームで競わせるという単純明快さは、かつての人気番組「筋肉番付」を彷彿とさせる。が、この番組がさらにその一歩先をいっているのは、100人を集めるという力技が生み出す参加者のバラエティ豊かさ。

ボディービルダーや格闘家などの定番どころはもちろん、五輪出場経験のあるガチのスポーツ選手や、一見細身に見えるが引き締まったモデル・俳優・ダンサー、さらにはTHE・実用筋肉!といった感じの軍隊経験者や刑務官などなど……

番組では参加者それぞれの上半身を型取って作った石膏像が1人1体用意されているんですが、それ見ているだけでも全然体型が違くて驚く。腕の筋肉が人の倍ぐらい発達してる人、体が逆三角形な人、純粋に体が大きい人……ひと口に「マッチョ」と言ってもこんなにも多様性があるのか……何それめっちゃ個性豊かじゃん……

特に、日本でも活躍していた秋山成勲さん(番組では韓国名の추성훈さんと名乗っている)は韓国でも有名らしく若手の参加者からリスペクトの視線を向けられていたり、他の参加者(もちろんマッチョ)が「アイツはやばい……」と恐れるような超BIGマッチョが参戦していたり……マッチョの世界でも名の知れたレジェンドマッチョたちが一堂に集結した様はまさに圧巻の一言。

ありとあらゆる筋肉がその技を競う、マッチョの社交界。鍛え上げられた筋肉と筋肉がぶつかる様は、さながらマッチョたちの社交ダンス!そんな豪華な祭りが今ならなんとNetflixで見放題!スゴ〜〜イ

【デカイ=強いじゃない!全員を生かすルール設計】

おおきいからだ、ちいさいからだ、そんなの ひとの かって

ほんとうに つよい マッチョなら じぶんの筋肉で かてるように がんばるべき……

十人十色ならぬ百人百マッチョな本作ですが、さらに面白いのは出演者の性別・国籍・年齢を一切問われていないという点。ただ一点「体自慢」であるということさえクリアしていれば誰でもオッケー。なので、もちろん中には女性の参加者も。

そんな何でもありルールにしたら体のでっかい人や腕がぶっとい人がぶっちぎりで優勝してしまうのでは?と思ったのだが、そういったマンパワーの差が巧妙なルール設計によって解消されているというのも本作の面白い点。

特に驚かされたのは、最初のゲームが始まる前のプレゲーム。一体何をやるのかと思ったら、天井から降りてきたのは鉄のフレーム。100人がこのフレームにぶら下がって、最後まで残っていた人が勝ち、というまさかの持久戦が始まったのだ。

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(↑先行映像の00:05からその様子の一部が見られます。絶対やりたくね〜)

「一番強い体の持ち主を選ぶ」と名目で集められているから、当然ムキムキ系マッチョたちは100人が集まった場でも自分の体の大きさに余裕を感じていたろうし、逆にそんなムキムキ系マッチョを見た細マッチョたちは不安を感じていたはず。しかし、この最初のぶら下がりレースでは、そのヒエラルキーが完全に逆転する。

体の軽い女性や、細マッチョたちが圧倒的に有利になり、逆に筋肉自慢や体の大きい人たちは自重に耐えられずに次々と脱落していく。筋肉が無さすぎてもダメ、自重が重すぎてもしんどいという絶妙なゲームバランス。

さらには「イカゲーム(2021)」さながらの無機質な進行や、前半の脱落者にはなりたくない!というプレッシャーが参加者たちを追い詰めていく。特にデスゲーム的な雰囲気は参加したほとんどの人が感じていたようで「これ落ちても死なないよね!?」と言っている参加者の表情が結構真剣に心配しているのも面白かった。0円でデスゲームの主催者気分になれるのもこの作品の醍醐味かもしれない。

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その後も、参加者が互いに対戦相手を指名するシステムや、人気投票によるチーム戦など、様々なルールが展開。生まれながらに持っている体のポテンシャルだけではなく、鍛え方や得意な分野、性格や評判など、それぞれの個性がゲームに活かされ、さらにその組み合わせの可能性が番組の進行に奥行きを与えている。

体が大きいけどその分スピードが劣る人が、体の大きさを生かして耐久戦に持ち込んだり、逆に巨人みたいな大男が自分より身長の小さい筋肉団子みたいな人に投げ飛ばされちゃったり。個人プレーで嫌味な態度を取った強者が、後々のチーム戦でハブられまくったり。まるで漫画のような思いも寄らない逆転劇が繰り広げられるのでとにかく目が離せない。体の大小という生まれついてのギフトだけでなく「ここに至るまでどうやって体を育てたか」が勝敗を分ける重要な要素になる。彼らの筋肉に込められたストーリーが感じられるのもまたアツい!

【勝っても負けても、目立てば君が主人公!】

豪華絢爛な出演者、そして巧妙なゲームシステム。そうした番組を構成する要素の凄さを力説してきた訳だが、この番組の真髄はもう一つ他にある。それは、番組制作者の「主人公」を見極める”目”だ。

人が競っているのを他人事のように見るのが好きなので、いままで数々のコンテスト番組を見てきた訳ですが、この手の番組の継続視聴の最大の決め手になるのは「1話の時点で推しができるかどうか」だと思っている。ワタシコイツ好き!絶対勝ってくれ!と思わせる存在を見つけること。

中でも「フィジカル100」はコンテスタントが100名という破格の規模、しかも全員が同じユニフォームで同じゲームに参加するという均質な条件。その中から「主人公」を見つけるのは非常に難易度が高いと思われる。しかし、この番組はその「主人公」を仕立てるのがとてもとてもとても上手く、しかもその主人公性がゲームそのものの勝敗に関わらないというところが面白い。

それが特に現れているのが、第1試合で行われた「ボール奪い対決」。

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挑戦者たちは「泥んこスタジアム」と「公園」の2ステージのどちらかを選び、1対1でボールを奪い合う。タイムアップの時にボールを持っていた人が勝ち、という単純明快なルールで競い合う。

100人の参加者を50人まで絞り込む1on1なので、純粋に50試合が開催される訳なんですが、番組内で取り上げられるのはどれも厳選された白熱展開揃い!

観客が押し寄せるほど人気で有名な元UDT(韓国海軍)出身のAgent hと若手実力派ボディビルダーの一戦では、実戦派かつスマートなビジュアルで圧倒的な下馬評支持を得ていたAgent hがまさかの苦戦を強いられたり。プレ試合の「ぶら下がり対決」で最初に脱落してしまった ゾンビ映画の振付師が、実は策士で奇怪な動きと圧倒的なスピードでナメていた相手を翻弄したり。試合相手を指名できるシステムなので、後輩プロレスラーがあえて先輩プロレスラーを指名してプライドをかけたバトルしたり。とにかく1試合1試合の密度が濃い!!!

勝敗に関わらず面白いエピソードを持っている人のことはめちゃくちゃ印象に残るようにガッツリ取り上げてくれるので、たとえ負けたとしても終わる頃にはすっかりファンになってしまう。ぜひ、自分の推しマッチョを探してみてほしい。

【ということで……】

私の推しを見てもらってもいいですか?????
というか、ここまで書いたのも彼のことを紹介したかったからに他ならないんですよ。

私の推し、190cm115kgのメチャデカ刑務官・박정호(パク・ジュンホ)さんで〜す!!!!

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第1試合でめちゃフィーチャーされている彼ですが、常時ニコニコ笑顔なのに職業刑務官で190cmの巨体に明かに実務用の柔らか筋肉がぎっしりついているというギャップがヤバ〜〜〜〜〜いのよ。常に口調は穏やかで対戦相手を称えるようなリスペクトに溢れた人柄、そして「付くべくして付けました」と言わんばかりの筋肉にストーリーを感じ図にはいられない。笑顔で凶悪犯をバッタバッタと薙ぎ倒している勤務風景を見せてくれ〜〜〜(幻視)

そしてさらに”良い”のがこちらのバチギメ写真。

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ヤバ〜〜〜〜〜!?!?!??!?!?!どないなってますのん!?!?!?!
キャプションが「最初のダイエット写真〜」なのもカワイイ。最高です。韓国語わからないんで自動翻訳かけたんですが、多分この写真のために頑張って減量なさったんでしょう。本当にありがとうございます素晴らしい筋肉をお見せいただいて……。

ちなみに、この直後の投稿にお子さんたちと一緒にフルーツ盛り盛りのパンケーキを作っているのもかわいい。いっぱい食べてください……いっぱい食べるのが似合いますね……最高ですね……

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残念ながら第1試合で敗退してしまったのでその先の活躍を見ることはできなかったんですが、この番組のおかげでかなり好きな体型をインターネット上で披露してくださっている方に出会えたので本当に見てよかった。仏像とかと同じテンションでマッチョを崇めているので、日々の鍛錬によって鍛えたお体を見せてくれる人には感謝がつきません。これからもその素晴らしい肉体と精神に幸あらんことを……